生殖補助医療(ART)について
体外受精とは採卵手術により排卵前に体内から取り出した卵子と精子の受精を体外で行う治療です。受精が正常に起こり、細胞分裂を順調に繰り返して発育した良好胚(受精卵)を子宮内に移植します。卵子と精子の受精を体外行う(体外受精)こと、その後の発育が体外行われる、つまり体外で培養する(体外培養)ことが一般不妊治療と決定的に違う点です。
体外受精の現在の状況に関して、日本産科婦人科学会は2012年度の体外受精、胚移植等の実施状況を下記のように発表しています。
総治療周期は326,426周期で、1年間に37,953人の児が誕生しています。日本全体で生まれた児に対して、生殖補助医療で生まれた児の割合は、3.66%であり、実に27人に1人が体外受精関連技術で生まれています。これは小学校の1教室に1人は生殖補助医療で出生した児がいることになります。1999年では、100人に1人の割合で体外受精児が誕生していましたが、その後の14年間で30人に1人の時代になりました。
体外受精が対象になる人は?
- タイミング療法や人工授精からのステップアップ
- 体外受精でしか妊娠できないと判断された方(卵管性不妊や重度男性不妊など)
- ご年齢を考えて成功率の高い方法を選択される方
体外受精の歴史
1978年 | イギリスで世界初の体外受精ベビー(女児)が誕生(ルイーズ・ブラウン)。 後に妹も体外受精で誕生する。 |
---|---|
1983年 | 世界初の凍結融解胚移植に成功 |
1983年 | 東北大学で日本初の体外受精に成功 |
1992年 | ベルギーで世界初の顕微授精に成功 |
1994年 | 日本初の顕微授精成功 |
1999年 | ルイーズの妹が自然妊娠、出産 (体外受精による出生児として世界初) |
2003年 | 国内3番目の体外受精出生児が自然妊娠出産(体外受精による出生児として日本初) |
2006年 | ルイーズが自然妊娠し、男児出産 |
本邦においては、2012年度に限っても37,953例の出産が報告されており、その臨床上の有用性や手技的安全性はほぼ確立していると言えます。一方、体外受精にて出生した児の長期的予後はいまだ調査段階にあります。これは、まだ次の世代が生まれてくるほど十分な時間がたっていないということです。この面では長期的な検討が十分に行われた治療法と言うことはできません。
体外受精のご案内