はじめに
お子さんが出来にくい原因や現在の体の状態を確かめるために必要な検査がいくつかあります。はっきりした原因がある場合はこれに対応する必要があります。また不妊症の原因検索に関する検査と並行して、不妊症治療を開始する際には、妊娠することの安全性について確認することが勧められます。妊娠した場合に問題となる可能性のある疾患をお持ちの方は治療後の安定した状態であることが望ましいです。
スクリーニング検査
不妊症検査にはこんなものがあります。
1. 内分泌検査
内分泌系初期検査としては以下が挙げられます。
- 黄体化ホルモン(LH)
- 卵胞刺激ホルモン(FSH)
- エストラジオール(E2)
- 乳汁分泌ホルモン(PRL)
- 黄体ホルモン(P4)
- テストステロン(T)
測定項目は対象症例および月経周期によって異なります。卵巣機能評価としてのホルモン基礎値は、卵胞期初期の月経周期3~7日目にFSH、LH、E2の3項目を測定します。また、乳汁漏出症例はもとより、排卵障害や月経周期の異常が認められる症例ではPRLの測定が望ましいです。
また多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome:PCOS)を疑う症例においては併せてテストステロンを測定すると有用なことがあります。
黄体ホルモン(P4)測定は基礎体温の変化から黄体機能不全が疑わしい症例において測定意義があります。黄体期中期に測定します。
ホルモン負荷テストや甲状腺機能検査(TSH, fT3, fT4)は、必要であると評価された症例に対して施行します。
2. クラミジア抗体検査
不妊の初期検査としてクラミジア抗体検査(lgG、lgA)の意義は深いとされます。lgG抗体は既往感染があると治癒後も陽性が持続することが多いのですが、過去の感染であっても対応が必要です。治療歴のない抗体陽性例やlgA抗体陽性例、および抗体検査で現在の感染が否定できない場合は,配偶者とともに治療を受けることが望ましいです。クラミジア抗原(核酸同定)検査は検査時点でのクラミジア感染の有無(感染性があるのか)の診断に有用ではありますが、卵管あるいは腹腔内に進行した感染では、抗原検査では感染を確認できない症例があります。
3. 卵管疎通性検査
卵管疎通性検査は子宮卵管通水法、子宮卵管造影法があります。検査実施に際しては月経周期、帯下の状態、アレルギーの有無を確認し、さらにクラミジア感染の陰性を確認する必要があります。子宮内腔の形態評価には子宮鏡が有用の場合もあります。
4. 一般精液検査
一般精液検査は男性因子の評価に必要な検査です。治療の早期に実施することが望ましいと考えられます。
5. 精子頸管粘液適合試験(フーナーテスト:性交後試験)
精子頸管粘液適合試験(フーナーテスト:性交後試験)は特殊な機器を必要とせず、外来で実施可能な簡単な検査であり初期検査として重要です。超音波検査やホルモン検査により特定された至適検査日(排卵日ピッタリに)に実施することが重要です。抗精子抗体測定は、フーナーテスト不良症例に対して施行すると治療のヒントになることがあります。
6. その他の検査
その他の一般婦人科検査として子宮がん検査、腟内細菌培養検査を行うことがあります。
当院での実際の検査項目
月経周期によって検査の時期が決まっている検査
なにを? | いつ? | なんのため? |
---|---|---|
月経時ホルモン検査 (ホルモン基礎値) |
月経2-5日目 | 脳下垂体から卵巣を刺激するために分泌されるホルモン(FSH, LH)やエストロゲンを測定します。 |
子宮卵管造影 | 月経終了後すぐに | 卵管の通過性や子宮腔の状態を確認する検査です。 |
超音波検査 (卵胞と子宮内膜チェック |
随時 | 排卵日を予測するために行います。 |
子宮頸管粘液検査 | 排卵日付近で | 子宮が排卵日に適した状態になっているかの確認 |
フーナーテスト | 排卵日での性交渉後 | 精子と女性側との相性を見ます。また精子のおおよその数がわかります。 |
黄体ホルモン検査 | 排卵後1週間前後 | 排卵後の黄体期の状態を評価をします。 |
検査の時期がいつでもいいもの(からだのチェックとして受ける検査)
- B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV
血液型、血算(貧血、血小板):感染症検査、血液状態の確認 - AMH:卵巣予備能(後述)
- クラミジア抗体検査
- 腟内細菌培養検査
- 子宮がん検査
- 精液検査