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ZyMōtスパームセパレーターの導入

より質の高い精子を回収するための調整方法
ZyMōtスパームセパレーターの導入

精子調整方法について

採取された精液中には、運動良好精子の他に死滅精子や白血球等の細胞が含まれています。当院ではこれまで運動良好精子を回収するために密度勾配遠心法やスイムアップ法(直進性の高い精子を回収する方法)を実施してきました。しかし、これらの方法では精子を回収するまでに時間を要し、精液中に含まれる死滅精子や白血球に起因する活性酸素の影響によって精子DNAが断片化することや遠心処理による物理的な衝撃により精子にダメージを与える可能性がありました。
そこで当院では、遠心処理を行わずに、より質の高い精子を短時間で回収することが可能となった「ZyMōtスパームセパレーター」を導入しました。

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精子DNAの断片化について

ヒトのDNAは2本鎖で形成されていますが、紫外線や酸化ストレスなどによって2本鎖の一部分あるいは全部が切断されてしまうことがあります。このような現象をDNAの断片化と呼びます。精子で起こるDNAの断片化は、精液中に含まれる死滅精子や白血球に起因する活性酸素に精子が長時間暴露されることが原因であると報告されています。

DNA修復機能について

ヒトの細胞の多くはDNAに起きた断片化等の異常を修復する機能を有していますが、精子はこの修復機能を備えていません。そのため精子で起きたDNAの断片化は受精後に卵子が持つDNA修復機能によって修復されると考えられています。胚発育が不良な患者様や流産を繰り返す患者様では卵子のDNA修復機能が低下している可能性が報告されています。そのため、体外受精では精子DNAの断片化が起きていない質の高い精子を回収し治療に用いることが重要であると考えられます。

「ZyMōtスパームセパレーター」のメリット

ZyMōtスパームセパレーターは遠心処理をすることなく短時間で運動している精子のみを回収する方法です。遠心処理を実施しないため精子への物理的なダメージをなくすことができます。また運動良好な精子を短時間で回収するため、精液中に含まれる白血球や活性酸素によって引き起こされる精子DNAの断片化を最小限にすることができます。これらのことにより、より質の高い精子を効率よく回収することが期待できます(1)。

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精子DNAの断片化と体外受精の成績との関係

精子DNAの断片化は、胚発生、胚の染色体の異数体(染色体の異常)や胚移植後の妊娠率、流産率に影響することが報告されています。精液中のDNA断片化している割合が高く、過去にART治療において不成功であった患者様において、ZyMōtスパームセパレーターで回収した精子はDNAが断片化している割合が低くなることが報告されています。また、胚の異数体の頻度が低下することや胚移植後の妊娠率が改善されたという報告があります(2-4)。

参考画像3

参考文献

  1. D.Palermo Selection of spermatozoa with higher chromatin integrity through a microfluidics devices. Eshre 2017
  2. K.Hancock et al. Microfluidic sperm selection enhances ICSI outcomes by selecting spermatozoa with the highest chromatin integrity. Eshre 2019
  3. A.Parrella et al. Selecting spermatozoa with intact chromatin may reduce embryo aneuploidy. ASRM 2019
  4. A.Parrella et al. A treatment approach for couples with disrupted sperm DNA integrity and recurrent ART failure. J Assist Reprod Genet (2019). doi: 10.1007/s10815-019-01543-5