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培養室より

卵子のすがた

経腟超音波下で卵胞から卵胞液を吸引します。この中に卵子が含まれています。またこの操作を採卵といいます。培養室では 卵胞内を満たしていた「卵胞液」から『卵子』を顕微鏡下で探す作業をします。

『卵子』は 放射状に広がる顆粒膜細胞と呼ばれる キラキラした細胞に包まれています。肉眼で観察できない約0.1mmの『卵子』は、数mmの顆粒膜細胞に包まれることによって、顕微鏡下で観察しやすくなっています。


顆粒膜細胞に包まれた卵子

精子の調整(体外受精時)

精液の中から、受精に適した良好な精子を回収するために調整を行います。

射出精液の中には元気に運動する精子と、すでに死んでしまっている精子が混在しています。また白血球や細菌などの異物も含まれています。

当院では以下の方法で体外受精、顕微授精に用いたい『元気に運動する良好な精子』を回収します。これらの調整法は当院の基本的な調整方法となります。

(1)「精子密度勾配遠心法」により、異物・形態不良精子・死滅精子を取り除く作業を行います。

精子密度勾配遠心用培地と呼ばれる培養液を使用します。この培養液を使用することにより、「良好な精子」と異物・形態不良精子・死滅精子を分離することができます。その後、遠心分離機によって分離された、「良好な精子」を さらにきれいに洗浄します。

(「精子密度勾配遠心法」はあくまでも理論上の話です。良い精子だけを完全分離することはできません)

(2)洗浄された『良好精子』を 今度は「swim up(スイムアップ)法」と呼ばれる方法により、さらに『元気に運動する良好な精子』を回収します。「swim up(スイムアップ)法」では「洗浄した良好精子」を培養液の底へ静置し、元気に運動する精子が培養液の中へ泳ぎ出してきたものを回収します。

精液量、精子濃度、運動率を考慮し、患者さまごとに 適切な方法で調整を行います。

ICSI(イクシー):卵細胞質内精子注入法

ヒアルロニダーゼ(Hyaluronidase)という溶液を使用し、採卵時に卵子を包んでいた顆粒膜細胞を取り除きます。顆粒膜細胞を取り除くことにより、卵子を観察することが出来るようになります。この時に卵子が成熟しているか、まだ未熟な状態かを確認することが出来ます。

ICSIは 成熟した(MⅡ期;エムツー期)卵子でないと、実施することが出来ません。未熟な卵子(MⅠ期;エムワン期、GV期;ジーブイ期)に精子を注入しても「受精」は成立しません。

GV(germinal vesicle) 第一減数分裂前期
MⅠ(MetaphaseⅠ) 第一減数分裂中期(未成熟卵子)
培養することにより、MⅡ期へ進むこともあり
MⅡ(MetaphaseⅡ) 第二減数分裂中期 成熟卵子

顕微鏡下で卵子に対し、400-600倍の顕微鏡下で観察した形態が良好であり、かつ元気よく前進運動する精子を1個注入します。

卵子活性化

顕微授精(ICSI)を行っても受精が成立しないことがあります。その原因として、卵子または精子が受精成立のために、活性化を起こせない(受精によって引き起こされる卵子内のカルシウム上昇不足)、ということがあります。

顕微授精(ICSI)実施後の低受精率など、受精卵が得られなかった場合、医師の判断により、卵子活性化について提案させて頂くことがございます。

当院では 卵活性化障害が疑われる症例には「カルシウムイオノファ」という薬剤を含んだ培養液を使用し、 ICSI後の卵子活性化を誘導します。受精障害の原因特定は困難であり、この方法は、受精障害の原因が卵活性化障害にある場合にのみ効果があります。未だ確立した方法ではなく、効果は限定的になります。

SEET法

以前、着床率を高める方法として、初期胚(4-8分割の受精卵)と胚盤胞になった胚を同一周期に移植する「2段階胚移植」という方法が注目されました。しかし、日本産科婦人科学会の会告により、「生殖補助医療の胚移植において、移植する胚(受精卵)は原則として単一(1個)とする。」と定められたことにより、最終的に2個の胚を移植する「2段階胚移植」を積極的に実施することはできません。

「2段階胚移植」は、先に移植した初期胚が子宮内膜へ着床準備を始めるよう働きかけ、着床の準備が出来たころ胚盤胞に到達した胚を移植することで、着床が促されるのでは、という考えから発案されたものです。「2段階胚移植」の原理を応用したものが「SEET法」になります。初期胚に代わって子宮内膜を刺激するために、ご自身の胚培養に用いた培養液を使用する方法です。

(1) 最初の準備(凍結します)

受精卵を5-6日間培養し、「胚盤胞へ到達した良好な胚」を凍結保存します。この時、受精卵を培養するのに用いた 受精卵から放出された物質を含む「培養液」も凍結保存します。

(2) 治療周期(移植します)

凍結‐融解胚盤胞移植の前に 凍結保存した「培養液」を融解し、子宮内へ注入します。その2-3日後、融解した「胚盤胞」を1個胚移植します。

Embryo Glue®(着症対策)

Embryo Glue® (エンブリオグルー)は 胚移植時に使用するヒアルロン酸を豊富に含んだ培養液の名称です。ヒアルロン酸は子宮内膜にも自然に存在し、胚(受精卵)の着床を助けるのでは?と考えられています。ヒアルロン酸は 胚の着床を促し、さらに、粘性の高さから胚の保護効果も期待できるため「受精卵接着剤」として、注目されています。Embryo Glue® は FDA(米国食品医薬品局)に認可されており、本薬剤は受精卵に対して安全であることがわかっています。

当院では 胚移植(新鮮胚移植、凍結‐融解胚移植)全症例に対して このEmbryo Glue®を使用致します。

透明帯開口法(Assisted Hatching;アシステッドハッチング)

卵子・受精卵は受精、発育の段階では 透明帯という膜に守られていますが、胚盤胞に到達し、着床の直前には透明帯という膜から脱出(ハッチング)し、受精卵は子宮内膜へ入り込んで行きます(着床)。

透明帯開口法(アシステッドハッチング)とは胚(受精卵)が着床しやすくするために、透明帯からの脱出(ハッチング)をアシストする(助ける)方法で、 具体的には透明帯の一部を薄くしたり切開したりする技術のことです。透明帯を薄くしたり、切開する方法として、薬品を用いたり、透明帯に直接傷をつける方法がありますが、当院では、より安全な方法としてレーザーを用いた透明帯開口法(アシステッドハッチング)を実施おります。

良好胚を移植しても妊娠が成立しない、など 着床障害が疑われる場合に、有効な治療法のひとつ、として選択されます。良好胚を移植しても妊娠が成立しない、透明帯が厚い、40歳以上の場合、凍結‐融解胚移植、など、医師と相談し、この治療法を選択して頂くことになります。